第105回看護師国家試験 午後必修問題
平成28年2月14日(日)に実施された第105回看護師国家試験について、午後問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第105回看護師国家試験
|
|
厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
ご注文は書店、または下記ネット書店、電子書籍をご利用下さい。
|
ネット書店

電子書籍

▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 必修問題
▶午後1改題
日本の令和4年(2022年)における男性の平均寿命はどれか。
- 71.05年
- 76.05年
- 81.05年
- 86.05年
③ 81.05年
平均寿命とは0歳の平均余命をいい、令和4年(2022年)の簡易生命表では、男性が81.05年、女性が87.09年となっている。
*第2編3章 生命表 p70~73
▶午後2改題
日本の令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査における男性の喫煙習慣者の割合はどれか。
- 5.6%
- 25.6%
- 45.6%
- 65.6%
② 25.6%
令和5年(2023年)の喫煙率は男性が25.6%、女性が6.9%となっている。男女ともに喫煙率は低下傾向にある。
*第3編1章 2.6〕喫煙 p92~94
▶午後3
地球温暖化をもたらす温室効果ガスはどれか。
- 酸素
- 水素
- 窒素
- 二酸化炭素
④ 二酸化炭素
二酸化炭素やメタン、フロンなどの温室効果ガスの排出により、大気中の温室効果ガスの濃度が上昇して温室効果が強まり、地球温暖化が進行している。
*第9編1章 4.1〕地球温暖化対策 p317~318
▶午後4
終末期に自分がどのような医療を受けたいかをあらかじめ文書で示しておくのはどれか。
- アドヒアランス
- リビングウィル
- セカンドオピニオン
- インフォームド・コンセント
② リビングウィル
リビングウィル(Living Will)は、終末期における医療・ケアの方法や方針などを、患者本人があらかじめ書面で意思表示することをいい、本人の意思を直接確認できない状態になった場合に書面に従って治療方針を決定する。
×① アドヒアランス
アドヒアランスは患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定の下で治療を受けることをいう。
×③ セカンドオピニオン
セカンドオピニオンは主治医以外の医師による助言を受けることをいう。
×④ インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセントは医療提供者が適切な説明を行い、医療の受け手の理解を得るように努めることをいい、医療法に規定される。
▶午後5
医師の指示がある場合でも看護師に禁止されている業務はどれか。
- 静脈内注射
- 診断書の交付
- 末梢静脈路の確保
- 人工呼吸器の設定の変更
② 診断書の交付
看護師は傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする(保健師助産師看護師法5条)。診療の補助の範囲は厚生労働省通知により解釈がなされ、①、③、④は看護師が医師の指示の下に行うことができる。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後6
学童期の正常な脈拍数はどれか。
- 50〜70/分
- 80〜100/分
- 110〜130/分
- 140〜160/分
② 80〜100/分
脈拍数の基準値(目安)は、新生児期で120~140/分、乳児期で110~130/分、幼児期で90~110/分、学童期で80~100/分、成人期で60~100/分とされ、加齢とともに低くなる。
▶午後7
加齢に伴い老年期に上昇するのはどれか。
- 腎血流量
- 最大換気量
- 空腹時血糖
- 神経伝導速度
③ 空腹時血糖
加齢により、血糖値を一定に保つ働き(糖代謝)を持つインスリンの分泌量が低下することで、老年期に空腹時・食後の血糖値の上昇がみられる。その他は加齢により低下するが、特に②最大換気量は大幅に低下する。
▶午後8
医療法には「診療所とは、患者を入院させるための施設を有しないもの又は[ ]人以下の患者を入院させるための施設を有するもの」と定められている。
[ ]に入るのはどれか。
- 16
- 17
- 18
- 19
④ 19
なお、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものは、医療法に規定する病院である。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
▶午後9
介護支援専門員が行うのはどれか。
- 通所介護の提供
- 福祉用具の貸与
- 短期入所生活介護の提供
- 居宅サービス計画の立案
④ 居宅サービス計画の立案
介護支援専門員は、要介護者等を支援する上で解決すべき課題を把握(アセスメント)し、課題を解決するための居宅・施設の介護サービス計画を作成する。なお、介護サービス計画は利用者自ら作成することも可能である。
*第5編1章 8.3〕介護支援専門員〈ケアマネジャー〉 p228
▶午後10
成人の膀胱の平均容量はどれか。
- 100mL
- 500mL
- 1,000mL
- 1,500mL
② 500mL
成人の膀胱容量は、個人差もあるが500mL程度である。成人の平均尿量(1,000mL~1,500mL/日)と、乏尿(尿量400mL/日未満)、無尿(尿量100mL/日未満)などの数値と合わせて押さえたい。
▶午後11
不随意筋はどれか。
- 心筋
- 僧帽筋
- 大殿筋
- ヒラメ筋
① 心筋
不随意筋は自分の意思で動かすことのできない筋肉で、横紋筋のうち心臓にある心筋や、平滑筋のうち心臓を除く内臓や血管にある筋肉がこれに当たる。一方、随意筋は自分の意思で動かすことができる筋肉で、横紋筋のうち骨格筋(②・③・④)などがこれに当たる。
▶午後12
特定の抗原となる物質によって生じるアレルギー反応で引き起こされるショックはどれか。
- 心原性ショック
- 出血性ショック
- 神経原性ショック
- アナフィラキシーショック
④ アナフィラキシーショック
アナフィラキシーショックはⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)に分類され、体内に入った特定の原因物質(抗原)に対するIgE抗体の反応による、急性の過敏反応をいう。
▶午後13
咳嗽が起こりやすいのはどれか。
- 右心不全
- 左心不全
- 心筋梗塞
- 肺梗塞
② 左心不全
左心室は大動脈を通じて全身に血液を送るが、左心不全によりポンプ機能が低下することで、肺静脈系のうっ血が生じ、呼吸困難や咳嗽(せき)などの症状、呼吸困難を軽減するための起坐呼吸が多くみられる。
▶午後14
浮腫が生じやすいのはどれか。
- 甲状腺機能亢進症
- 過剰な運動
- 低栄養
- 熱中症
③ 低栄養
低栄養は血清アルブミンが3.5g/dL未満に低下した状態をいう。アルブミンは膠質浸透圧を保持して水分を血管内に留める働きがあるが、その低下により血管外に水分が漏出することで、浮腫(むくみ)を引き起こす。
×① 甲状腺機能亢進症
甲状腺は細胞の新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌しているが、甲状腺機能低下症によりホルモンの分泌が低下すると水分の代謝が低下し、浮腫が症状として現れる。
×② 過剰な運動
×④ 熱中症
運動や熱中症では汗として水分が失われ(脱水)、直接的な浮腫の原因とはならない。
▶午後15
貧血の診断に用いられるのはどれか。
- 血糖値
- 尿酸値
- C反応性蛋白値
- ヘモグロビン濃度
④ ヘモグロビン濃度
貧血は、血液中のヘモグロビン濃度が減少している状態と定義される。
▶午後16
C型慢性肝炎に使用するのはどれか。
- ドパミン
- インスリン
- リドカイン
- インターフェロン
④ インターフェロン
インターフェロン療法はB型肝炎、C型肝炎の治療に用いる。
*第3編3章 3.3〕ウイルス性肝炎 p132~134
▶午後17
カルシウム拮抗薬の服用時に避けた方がよい食品はどれか。
- 納豆
- 牛乳
- わかめ
- グレープフルーツ
④ グレープフルーツ
カルシウム拮抗薬は血管を拡張し、血圧を下げる降圧薬である。グレープフルーツに含まれる成分はカルシウム拮抗薬を代謝する酵素の働きを弱めるため、薬物服用時の摂取により血中濃度が高まり、血圧の異常な低下などの相互作用が起きることがある。
▶午後18
患者の洗髪の介助方法で適切なのはどれか。
- 脱脂綿で耳栓をする。
- 43〜44℃の湯をかける。
- 指の腹を使って洗う。
- 強い振動を加えて洗う。
③ 指の腹を使って洗う。
洗髪の介助では、地肌を傷つけないように指の腹で揉むように洗う。
×① 脱脂綿で耳栓をする。
洗髪時に耳栓をする場合、脱脂綿は吸水力があるため、脱脂されていない青梅綿を用いる。
×② 43〜44℃の湯をかける。
40℃前後のお湯を用いる。
×④ 強い振動を加えて洗う。
頭をあまり揺らさないように洗う。
▶午後19
全身清拭時、洗面器に準備する湯の温度で適切なのはどれか。
- 20〜25℃
- 30〜35℃
- 40〜45℃
- 50〜55℃
④ 50〜55℃
清拭時の温度は40℃程度が適しているが、準備時間やタオルで湯を絞る際に温度が下がるため、洗面器に準備する湯の温度は50〜55℃とされる。
▶午後20
スタンダードプリコーションの対象はどれか。
- 汗
- 爪
- 唾液
- 頭髪
③ 唾液
感染源の有無にかかわらず、血液・体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚・粘膜(湿性生体物質)を介する微生物の伝播リスクを減らすために、すべての患者に対して標準的な感染予防策(スタンダードプリコーション)を行う。なお、①汗は湿性生体物質であるが標準予防策からは除かれる。
*第4編1章 3.11〕院内感染対策 p180~181
▶午後21
経鼻経管栄養法の体位で適切なのはどれか。
- Fowler〈ファウラー〉位
- 仰臥位
- 腹臥位
- 側臥位
① Fowler〈ファウラー〉位
経鼻経管栄養法は、口からの食事が十分でない者に対して、鼻からチューブを挿入し、栄養剤を胃に送る方法である。注入時に栄養剤の逆流を防ぐため、上半身を45度程度上げる半坐位(ファウラー位)が適している。
▶午後22
成人用輸液セット1mL当たりの滴下数はどれか。
- 20滴
- 40滴
- 60滴
- 80滴
① 20滴
成人用輸液セット1mL当たりの滴下数は20滴である。1分当たりの滴下数や輸液残量を求める計算問題でよく用いられるが、1mL当たりの滴下数が伏せられている場合(105回午前90問)もあるため押さえておく。
▶午後23
ゴム製湯たんぽに入れる湯の温度で適切なのはどれか。
- 40℃程度
- 60℃程度
- 80℃程度
- 100℃程度
② 60℃程度
湯たんぽは、身体の一部に温熱刺激を与える温罨法で用いられる。ゴム製湯たんぽに入れる湯は60℃程度で、湯を3分の2程度入れて空気を抜いて使用する。
▶午後24
鼻腔内の吸引で正しいのはどれか。
- 無菌操作で行う。
- 吸引圧をかけた状態で吸引チューブを挿入する。
- 鼻翼から一定の距離で固定して吸引する。
- 吸引チューブを回転させながら吸引する。
④ 吸引チューブを回転させながら吸引する。
×① 無菌操作で行う。
鼻腔など上気道には常在菌が存在するため、鼻腔内吸引時に無菌操作は不要である。なお、原則無菌状態である下気道に挿管する気管内吸引では、細菌感染による肺炎等の予防のため無菌操作を行う。
×② 吸引圧をかけた状態で吸引チューブを挿入する。
×③ 鼻翼から一定の距離で固定して吸引する。
○④ 吸引チューブを回転させながら吸引する。
カテーテルは、鼻孔粘膜を傷つけないように陰圧(吸引圧)をかけずに深部まで挿入し、陰圧をかけて回転させながら引き抜きつつ吸引する。1回の吸引時間は10~15秒を目安し、できるだけ短時間とする。
▶午後25
母乳栄養で不足しやすいのはどれか。
- ビタミンA
- ビタミンB
- ビタミンC
- ビタミンE
- ビタミンK
⑤ ビタミンK
母乳中には血液凝固作用を持つビタミンKが少なく、新生児のビタミンK欠乏性出血症を予防するため、出生後にビタミンKの内服が行われている。
資料 厚生労働省「第102回保健師国家試験、第99回助産師国家試験、第105回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第105回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 保健師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 助産師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 医師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 薬剤師国家試験に出る国民衛生の動向