第109回看護師国家試験 午後必修問題
令和2年2月16日(日)に実施された第109回看護師国家試験について、午後問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第109回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 必修問題
▶午後1改題
令和4年(2022年)の日本における簡易生命表で女性の平均寿命に最も近いのはどれか。
- 77年
- 82年
- 87年
- 92年
③ 87年
平均寿命とは0歳の平均余命をいい、令和4年(2022年)の簡易生命表では、男性が81.05年、女性が87.09年となっている。
*第2編3章 生命表 p70~73
▶午後2改題
令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査で20歳以上の男性における喫煙習慣者の割合に最も近いのはどれか。
- 6%
- 16%
- 26%
- 46%
③ 26%
令和5年(2023年)の喫煙率は男性が25.6%、女性が6.9%となっている。男女ともに喫煙率は低下傾向にある。
*第3編1章 2.6〕喫煙 p92~94
▶午後3
じん肺に関係する物質はどれか。
- フロン
- アスベスト
- ダイオキシン類
- ホルムアルデヒド
② アスベスト
じん肺は、主に粉じん(石綿〈アスベスト〉含む)の発生する環境で仕事をしている労働者が、粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病をいう。
*第8編 5.1〕粉じん障害防止対策 p302
▶午後4
日本において国民皆保険制度となっているのはどれか。
- 医療保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
① 医療保険
わが国はすべての国民が、「被用者保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療」のいずれかの医療保険制度に加入することとされており、この国民皆保険はわが国の医療保険制度の大きな特徴となっている。
*第4編2章 1.医療保険制度 p208~209
▶午後5
保健師助産師看護師法で規定されている看護師の義務はどれか。
- 研究をする。
- 看護記録を保存する。
- 看護師自身の健康の保持増進を図る。
- 業務上知り得た人の秘密を漏らさない。
④ 業務上知り得た人の秘密を漏らさない。
保健師助産師看護師法に基づき、看護師は正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後6
エリクソン, E. H.の発達理論で青年期に生じる葛藤はどれか。
- 生殖性 対 停滞
- 勤勉性 対 劣等感
- 自主性 対 罪悪感
- 同一性 対 同一性混乱
④ 同一性 対 同一性混乱
エリクソンは成長段階ごとに果たすべき発達課題を示しており、青年期(13歳から20歳ころ)は、自分は何者であるかという自己同一性(アイデンティティ)の確立を達成する過程で、同一性の混乱との葛藤が生じる。
×① 生殖性 対 停滞
壮年期(40歳から60歳ころ)の発達課題であり、家庭的・社会的な次世代の育成(生殖性)を達成する過程で、停滞との葛藤が生じる。
×② 勤勉性 対 劣等感
学童期(6歳から13歳ころ)の発達課題であり、様々な課題の達成に挑戦し、他者と比べて有能感(勤勉性)を達成する過程で、劣等感との葛藤が生じる。
×③ 自主性 対 罪悪感
幼児後期(3歳から6歳ころ)の発達課題であり、幼児前期(1歳半から3歳ころ)に獲得した自律性を基に主体的・自主的な行動を達成する過程で、周囲からの注意などから罪悪感との葛藤が生じる。
▶午後7
乳児期における呼吸の型はどれか。
- 肩呼吸
- 胸式呼吸
- 腹式呼吸
- 胸腹式呼吸
③ 腹式呼吸
新生児期や乳児期では、横隔膜を上下に動かす腹式呼吸が中心である。7~8歳ころの学童期以降は胸式呼吸が優位となり、その間の幼児期後期ころは両者を組み合わせた胸腹式呼吸がみられる。
▶午後8
老年期にみられる身体的な変化はどれか。
- 血管抵抗の増大
- 消化管の運動の亢進
- 水晶体の弾性の増大
- メラトニン分泌量の増加
① 血管抵抗の増大
加齢により、血管が硬くなり弾力性が失われると、血液が流れる際の血管抵抗が増大する。特に老年期では、大動脈の硬化による収縮期血圧の上昇、拡張期血圧の低下を特徴とする。
▶午後9改題
令和5年(2023年)の日本の人口推計で10年前より増加しているのはどれか。
- 総人口
- 年少人口
- 老年人口
- 生産年齢人口
③ 老年人口
令和5年(2023年)の老年人口(65歳以上人口)は3623万人(29.1%)で、10年前と比べて増加している。
×① 総人口
令和5年(2023年)の総人口は1億2435万人で、10年前と比べて減少している。
×② 年少人口
令和5年(2023年)の年少人口(0~14歳人口)は1417万人(11.4%)で、10年前と比べて減少している。
×④ 生産年齢人口
令和5年(2023年)の生産年齢人口(15~64歳人口)は7395万人(59.5%)で、10年前と比べて減少している。
*第2編1章 1.2〕年齢別人口 p41~42
▶午後10
医療法に規定されている診療所とは、患者を入院させるための施設を有しないもの又は( )人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
( )に入る数字はどれか。
- 9
- 19
- 29
- 39
② 19
なお、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものは、医療法に規定する病院である。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
▶午後11
大腸で吸収されるのはどれか。
- 脂質
- 水分
- 糖質
- 蛋白質
② 水分
大腸は、小腸から送られた内容物から水分等を吸収し、ふん便を作る働きをもつ。
▶午後12
三叉神経の機能はどれか。
- 視覚
- 眼球の運動
- 顔面の知覚
- 表情筋の運動
③ 顔面の知覚
三叉神経は、顔面の感覚や咀嚼運動に関わる末梢神経である。
×① 視覚
視覚は視神経が関与している。
×② 眼球の運動
眼球の運動は、下に目を向ける滑車神経、外側に目を向ける外転神経、瞳孔調節機能などを持つ動眼神経が関与している。
×④ 表情筋の運動
表情筋の運動は顔面神経が関与している。
▶午後13
脂肪分解酵素はどれか。
- ペプシン
- リパーゼ
- マルターゼ
- ラクターゼ
② リパーゼ
リパーゼは主に膵臓に含まれる酵素で、胆汁により乳化された脂肪を分解するはたらきを持つ。
▶午後14
尿ケトン体が陽性になる疾患はどれか。
- 肝硬変
- 糖尿病
- 尿路感染症
- ネフローゼ症候群
② 糖尿病
ケトン体は、肝臓が脂肪を分解することで生成される酸性の物質である。糖尿病でインスリン作用が不足するとエネルギー源となるグルコース(ブドウ糖)が利用できず、脂肪を多く分解してエネルギーを作るため、尿中のケトン体(尿ケトン体)が陽性になる。
▶午後15
下痢によって生じやすい電解質異常はどれか。
- 低カリウム血症
- 高カルシウム血症
- 高ナトリウム血症
- 低マグネシウム血症
① 低カリウム血症
低カリウム血症は、激しい下痢や利尿薬の長期使用などにより、カリウムの排泄量が増大することで起こる電解質異常である。
▶午後16
意識レベルを評価するスケールはどれか。
- Borg〈ボルグ〉スケール
- フェイススケール
- ブリストルスケール
- グラスゴー・コーマ・スケール〈GCS〉
④ グラスゴー・コーマ・スケール〈GCS〉
意識レベルを評価するスケールとして、グラスゴー・コーマ・スケール〈GCS〉とジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉が用いられる。
×① Borg〈ボルグ〉スケール
ボルグスケールは主観的運動強度の評価をするスケールである。
×② フェイススケール
フェイススケールは痛みの評価をするスケールである。
×③ ブリストルスケール
ブリストルスケールは大便の性状の評価をするスケールである。
▶午後17
マズロー, A. H.の基本的欲求の階層構造で承認の欲求はどれか。
- 尊重されたい。
- 休息をとりたい。
- 他人と関わりたい。
- 自分の能力を発揮したい。
① 尊重されたい。
マズローの欲求階層説では、低階層から、「生理的(食事、排泄、睡眠等)欲求」「安全(危険回避)の欲求」「社会的(所属・愛情)欲求」「自尊(承認)の欲求」「自己実現の欲求」の5階層となっており、人間は低階層の欲求が満たされると高階層の欲求に移っていくことをあらわす。②は生理的欲求、③は社会的欲求、④は自己実現の欲求である。
▶午後19
患者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。
- 否定的感情の表出を受けとめる。
- 沈黙が生じた直後に会話を終える。
- 看護師が伝えたいことに重点をおく。
- 患者の表情よりも言語による表現を重視する。
① 否定的感情の表出を受けとめる。
患者とのコミュニケーションにおいては、患者からの言語的・非言語的な情報を、否定的感情を含めて積極的に受け取ること(傾聴・観察)が重要である。
▶午後20
入浴の温熱作用はどれか。
- 筋緊張が増す。
- 末梢血管が拡張する。
- 慢性疼痛が増強する。
- 循環血液量が減少する。
② 末梢血管が拡張する。
温浴効果により、手足の末梢血管が拡張し、血行が促進(循環血液量の増加)される(温熱作用)。また、筋肉の緊張が緩み、リラックス効果、腰痛・肩こりの緩和、睡眠促進などの効果が認められる。
▶午後21
標準予防策〈スタンダードプリコーション〉で感染源として取り扱うのはどれか。
- 汗
- 爪
- 唾液
- 頭髪
③ 唾液
感染源の有無にかかわらず、血液・体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚・粘膜(湿性生体物質)を介する微生物の伝播リスクを減らすために、すべての患者に対して標準的な感染予防策(スタンダードプリコーション)を行う。なお、①汗は湿性生体物質であるが標準予防策からは除かれる。
*第4編1章 3.11〕院内感染対策 p180~181
▶午後22
赤血球製剤の保存温度で適切なのはどれか。
- -6~-2℃
- 2~6℃
- 12~16℃
- 22~26℃
② 2~6℃
輸血用血液製剤の保存温度は、赤血球製剤や全血製剤は2~6℃とされる。なお、血漿製剤は-20℃以下、血小板製剤は20~24℃(保存中は凝集の予防のため振とうが必要)である。
*第6編3章 1.血液製剤 p265~268
▶午後23
成人で1日の尿量が100mL以下の状態を示すのはどれか。
- 希尿
- 頻尿
- 乏尿
- 無尿
④ 無尿
×① 希尿
×② 頻尿
いずれも1日の尿の回数でみた異常で、希尿は回数が少ないもの、頻尿は回数が多いものをいう。
×③ 乏尿
○④ 無尿
成人の1日平均尿量は1,000mL~1,500mLで、400mL以下を乏尿、100mL以下を無尿という。
▶午後24
仰臥位における褥瘡の好発部位はどれか。
- 踵骨部
- 内顆部
- 膝関節部
- 大転子部
① 踵骨部
仰臥位は仰向けに横たわる体位をいい、仰臥位で圧力が集中する後頭部、肩甲骨部、肘部、仙骨部、踵骨部は褥瘡の好発部位である。
▶午後25
成人の静脈血採血で通常用いられる注射針の太さはどれか。
- 14G
- 18G
- 22G
- 26G
③ 22G
成人の静脈血採血では、21~23Gの太さの注射針が用いられる。
資料 厚生労働省「第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験、第109回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
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