第111回看護師国家試験 午後必修問題
令和4年2月13日(日)に実施された第111回看護師国家試験について、午後問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第111回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 必修問題
▶午後1改題
令和5年(2023年)推計による日本の将来推計人口で令和52年(2070年)の将来推計人口に最も近いのはどれか。
- 6,700万人
- 8,700万人
- 1億700万人
- 1億2,700万人
② 8,700万人
令和4年(2022年)の総人口は1億2,495万人で減少傾向が続いており、将来推計人口(令和5年推計)によると、令和42年(2060年)には9,615万人と1億人を切り、令和52年(2070年)には8,700万人となる。
*第2編1章 1.人口の動向 p41~44
▶午後2
生活習慣病の三次予防はどれか。
- 健康診断
- 早期治療
- 体力づくり
- 社会復帰のためのリハビリテーション
④ 社会復帰のためのリハビリテーション
疾病の予防対策には、生活習慣の改善や予防接種等により発症そのものを予防する一次予防、検診等により発症の早期発見・早期治療により重症化を予防する二次予防、リハビリテーション等により疾病の進行後の社会復帰を図る三次予防がある。③は一次予防、①と②は二次予防である。
*第3編1章 1.1〕生活習慣病の概念 p80
▶午後3
職業性疾病のうち情報機器〈VDT〉作業による健康障害はどれか。
- じん肺
- 視力障害
- 振動障害
- 皮膚障害
② 視力障害
情報機器〈VDT〉作業を行う労働者の職業性疾病として、視力障害、筋骨格系の症状、ストレス等による症状が挙げられる。
*第8編 5.職業性疾病の予防対策 p302~303
▶午後4
介護保険における被保険者の要支援状態に関する保険給付はどれか。
- 医療給付
- 介護給付
- 年金給付
- 予防給付
④ 予防給付
介護保険制度において、要介護状態(1~5)の者には介護給付が、要支援状態(1、2)の者には予防給付が支給される。
*第5編1章 3.介護給付 p222~225
*第5編1章 4.予防給付 p225
▶午後5
看護師免許を付与するのはどれか。
- 保健所長
- 厚生労働大臣
- 都道府県知事
- 文部科学大臣
② 厚生労働大臣
保健師助産師看護師法に基づき、看護師になろうとする者は看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後6
フィンク, S. L.の危機モデルで第2段階はどれか。
- 衝撃
- 承認
- 適応
- 防御的退行
④ 防御的退行
臨床場面等で、危機的状況に対する過程を模式的に表した危機モデルを用いた対応がなされる。そのうち、フィンクは、「衝撃」「防御的退行」「承認」「適応」の4段階を示し、感情的・防御的な対応から問題解決型の対応になっていく過程を表している。
▶午後8
次の時期のうち基礎代謝量が最も多いのはどれか。
- 青年期
- 壮年期
- 向老期
- 老年期
① 青年期
日本人の食事摂取基準(2020年版)で推定された基礎代謝量は、男性は15~17歳(1,610kcal/日)、女性は12~14歳(1,410kcal/日)で最も高く、青年期以降は加齢に伴って低下していく。
*第3編1章 2.2〕栄養・食生活 p88~90
▶午後9
世界保健機関〈WHO〉が平成12年(2000年)に提唱した「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」はどれか。
- 健康寿命
- 健康余命
- 平均寿命
- 平均余命
① 健康寿命
健康寿命とは「日常生活に制限のない期間」であり、令和元年は男72.68年・女75.38年と男女ともに延伸している。
*第3編1章 2.1〕(6)健康寿命の延伸 p87~88
▶午後10
指定訪問看護ステーションには常勤換算で( )人以上の看護職員を配置することが定められている。
( )に入るのはどれか。
- 1.0
- 1.5
- 2.0
- 2.5
④ 2.5
指定訪問看護ステーションには、看護職員(保健師、看護師、准看護師)を常勤換算で2.5人以上となる員数(うち1名は常勤)と、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を適当数置く。なお、管理者は専従かつ常勤の保健師または看護師とされる。
*第4編1章 3.2〕訪問看護 p170~172
▶午後11
左心室から全身に血液を送り出す血管はどれか。
- 大静脈
- 大動脈
- 肺静脈
- 肺動脈
② 大動脈
左心室は大動脈を通じて全身に血液を送り、大静脈を通じて右心房に至る(体循環)。右心房から右心室に送り出された血液は、肺動脈を通じて肺に送られ、肺静脈を通じて左心房に至る(肺循環)。
▶午後12
内分泌器官はどれか。
- 乳腺
- 涙腺
- 甲状腺
- 唾液腺
③ 甲状腺
甲状腺は、代謝を促進する甲状腺ホルモンを血液中に分泌する内分泌器官である。ホルモン分泌の低下(甲状腺機能低下症)により低体温症状などを引き起こす。
▶午後13
呼吸中枢があるのはどれか。
- 間脳
- 小脳
- 大脳
- 脳幹
④ 脳幹
呼吸中枢は、脳幹の橋から延髄にかけての部分にあり、呼気と吸気を調整し、呼吸リズムを形成している。
▶午後14
細菌感染で起こるショックはどれか。
- 心原性ショック
- 敗血症性ショック
- アナフィラキシーショック
- 循環血液量減少性ショック
② 敗血症性ショック
敗血症は、感染症の原因となる細菌等に起因して重度の臓器障害等を起こしている病態をいう。蘇生処置にも関わらず低血圧が持続し、ショック状態に陥った状態を敗血症性ショックといい、死亡リスクが非常に高い。
▶午後15
低体温から回復するための生体の反応はどれか。
- 発汗
- ふるえ
- 乳酸の蓄積
- 体表面への血流増加
② ふるえ
低体温は、代謝の低下や外部環境の温度の低下、内分泌疾患(甲状腺機能低下症等)などにより深部体温に近い直腸温が35℃を下回った場合に診断される。ふるえは体温の低下に対し、熱産生を誘導するための生体反応である。
▶午後16
貧血の定義で正しいのはどれか。
- 血圧が低下すること
- 脈拍が速くなること
- 立ち上がると失神を起こすこと
- ヘモグロビン濃度が減少していること
④ ヘモグロビン濃度が減少していること
貧血は、血液中のヘモグロビン濃度が減少している状態と定義される。
▶午後17
全身性けいれん発作を起こしている患者に最も優先して行うのはどれか。
- 気道確保
- 周囲の環境整備
- 末梢静脈路の確保
- 心電図モニターの装着
① 気道確保
全身性けいれん発作の多くは意識障害を伴い、強い筋収縮のため十分な呼吸ができない場合があり、嘔吐物や唾液等による窒息を防ぐ観点からも、回復体位にするなど気道の確保が優先される。
▶午後18
左心不全でみられる症状はどれか。
- 肝腫大
- 下腿浮腫
- 起坐呼吸
- 頸静脈怒張
③ 起坐呼吸
左心室は大動脈を通じて全身に血液を送るが、左心不全によりポンプ機能が低下することで、肺静脈系のうっ血が生じ、呼吸困難や咳嗽(せき)などの症状が現れる。起坐位で呼吸困難が軽減されるため、左心不全患者に起坐呼吸が多くみられる。
▶午後19
大腸の狭窄による便秘はどれか。
- 器質性便秘
- 痙攣型便秘
- 弛緩型便秘
- 直腸性便秘
① 器質性便秘
器質性便秘は、大腸癌や腸管の炎症、癒着などにより通過障害が起きる便秘である。
×② 痙攣型便秘
痙攣型便秘は自律神経の失調等により生じる。
×③ 弛緩型便秘
弛緩型便秘は筋力の低下等により生じる。
×④ 直腸性便秘
直腸性便秘は直腸の排便機能の低下等により生じる。
▶午後20
左片麻痺患者の上衣の交換で適切なのはどれか。
- 左腕から脱がせ、左腕から着せる。
- 左腕から脱がせ、右腕から着せる。
- 右腕から脱がせ、左腕から着せる。
- 右腕から脱がせ、右腕から着せる。
③ 右腕から脱がせ、左腕から着せる。
片麻痺等のある者や片腕の持続点滴患者の衣類の着脱介助時には脱健着患が原則で、脱ぐときは健側から、着るときは患側から行う。本問の場合は、麻痺のない右腕(健側)から脱がせ、麻痺のある左腕(患側)から着せる。
▶午後21
転倒・転落を起こすリスクを高める薬はどれか。
- 降圧薬
- 抗凝固薬
- 気管支拡張薬
- 副腎皮質ステロイド薬
① 降圧薬
降圧薬による血圧の低下により、起立性低血圧などめまいやふらつき、意識障害が起こり、転倒・転落を起こすリスクが高まる。
▶午後22
注射針の刺入角度が45〜90度の注射法はどれか。
- 皮下注射
- 皮内注射
- 筋肉内注射
- 静脈内注射
③ 筋肉内注射
筋肉内注射は、皮下組織の奥にある筋肉内に直接注射するため、確実に届くように45~90度の角度で刺入する。
×① 皮下注射
皮下注射は皮下脂肪が5mm以上の部位の皮膚をつまみ上げて、10~30度の角度で刺入する。
×② 皮内注射
皮内注射は注射部位を伸展し、ほぼ平行(0度)に刺入する。
×④ 静脈内注射
静脈血注射は、静脈血管の走行に合わせて10~20度の角度で刺入する。
▶午後23
点滴静脈内注射で輸液ポンプを使用する際に設定する項目はどれか。
- 薬剤名
- 終了時間
- 投与月日
- 1時間あたりの流量
④ 1時間あたりの流量
輸液ポンプは、輸液や薬剤を一定の速度・正確な量で投与するための医療機器で、輸液ポンプに設定する項目は輸液の流量と予定量である。
▶午後24
褥瘡の深達度分類で水疱形成のステージはどれか。
- Ⅰ
- Ⅱ
- Ⅲ
- Ⅳ
② Ⅱ
褥瘡の重症度は深達度によって分類され、NPUAP(米国褥瘡諮問委員会)のステージ分類が代表的である。ステージⅠは消退しない発赤、ステージⅡは部分欠損、ステージⅢは全層皮膚欠損、ステージⅣは全層組織欠損とされ、水疱を呈することがある段階はステージⅡである。
▶午後25
最も高い照度を必要とするのはどれか。
- 病室
- 手術野
- トイレ
- 病棟の廊下
② 手術野
保健医療施設の照度は日本産業標準調査会のJIS規格により定められており、中でも手術室は全般1,000ルクス、手術野10,000~100,000ルクスと高く設定されている。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
資料 厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験、第111回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
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