第113回看護師国家試験 午後必修問題
令和6年2月11日(日)に実施された第113回看護師国家試験について、午後問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第113回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 必修問題
▶午後1改題
令和4年(2022年)の日本における簡易生命表で女性の平均寿命に最も近いのはどれか。
- 77年
- 82年
- 87年
- 92年
③ 87年
平均寿命とは0歳の平均余命をいい、令和4年(2022年)の簡易生命表では、男性が81.05年、女性が87.09年となっている。
*第2編3章 生命表 p70~73
▶午後3
労働安全衛生法に規定されているのはどれか。
- 失業手当の給付
- 年少者の労働条件
- 過労死に関する調査研究
- 労働者に対する健康診断
④ 労働者に対する健康診断
労働安全衛生法では、「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の労働衛生の3管理を整備しており、健康管理については健康診断とその結果に基づく事後措置、健康指導を規定している。
×① 失業手当の給付
雇用保険法に規定されている。
×② 年少者の労働条件
労働基準法に規定されている。
×③ 過労死に関する調査研究
過労死等防止対策推進法に規定されている。
*第8編 3.労働衛生管理の基本 p300~301
*第8編 7.健康診断に基づく健康確保対策 p305~306
▶午後4
平成13年(2001年)の「身体拘束ゼロの手引き」において身体拘束の禁止対象となる行為はどれか。
- L字バーを設置する。
- 離床センサーを設置する。
- 点滴ルートを服の下に通して視野に入らないようにする。
- ベッドを柵(サイドレール)で囲んで降りられないようにする。
④ ベッドを柵(サイドレール)で囲んで降りられないようにする。
医療施設等で身体の自由を奪う身体拘束は、生命または身体を保護するために緊急やむを得ない場合を除き行ってはならない。自分で降りられないようにベッドを柵(サイドレール)で囲むことは身体拘束の禁止対象となる行為とされる。
×① L字バーを設置する。
L字バーはベッドからの移動・移乗に立ち上がりを容易にする一部可動式の柵で、通常の使用では禁止対象とはならない。
×② 離床センサーを設置する。
離床センサーは、認知症等により転倒・転落リスクの高い患者に対し、離床したことを検知し、通知するもので、禁止対象とはならない。
×③ 点滴ルートを服の下に通して視野に入らないようにする。
点滴ルートを視野に入らないようにすることは、せん妄や抜針を防止するために適切である。
▶午後5
看護師の業務従事者届の届出先はどれか。
- 保健所長
- 厚生労働大臣
- 都道府県知事
- 都道府県ナースセンターの長
③ 都道府県知事
保健師助産師看護師法に基づき、業務に従事する看護師は、2年ごとに就業地の都道府県知事に氏名や住所などを届け出なければならない。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後6
成長・発達における順序性で正しいのはどれか。
- 頭部から脚部へ
- 微細から粗大へ
- 複雑から単純へ
- 末梢から中心へ
① 頭部から脚部へ
基本的な運動発達は、頭部から下部(脚部)、中枢から末梢、粗大運動から微細運動などの傾向がある。
▶午後7
第二次性徴が発現し始めた思春期に関心が向くのはどれか。
- 善悪の区別
- 仕事と家庭の両立
- 自己の身体の変化
- 経済力の確保と維持
③ 自己の身体の変化
身長等の発育が加速する第二次性徴は思春期に生じ、自己の身体の変化(ボディイメージ)に関心が向く時期である。
×① 善悪の区別
乳幼児期の特徴であり、歩行、固形食、発話、排泄統御、性差と性の慎み、単純な社会概念、善悪の区別、良心、身近な人間関係などを学習する時期である。
×② 仕事と家庭の両立
×④ 経済力の確保と維持
成人期(壮年期・中年期)の特徴であり、職業生活の開始と地位の確保、経済的な自立、配偶者の選択などの発達課題が挙げられる。
▶午後8
老化に伴う視覚の変化で正しいのはどれか。
- 視野が狭くなる。
- 近くが見やすくなる。
- 色の識別がしやすくなる。
- 明暗順応の時間が短縮する。
① 視野が狭くなる。
加齢に伴い視野(特に周辺視野)が狭くなる。また、加齢に伴い増加する緑内障の症状として、不可逆的に視野が狭くなる。
×② 近くが見やすくなる。
加齢による生理的な変化として、近見視力が低下する(老眼)。
×③ 色の識別がしやすくなる。
加齢によって水晶体が濁ることにより、色の識別がしにくくなる(老人性白内障)。
×④ 明暗順応の時間が短縮する。
加齢による生理的な変化として、明順応(明るいところに出たときの順応)や暗順応(暗いところに入ったときの順応)などの感度が低下し、順応時間が伸びる。
▶午後9
人口統計資料集2020年版における生涯未婚率(50歳時の未婚割合)で、平成22年(2010年)から令和2年(2020年)の推移で適切なのはどれか。
- 変化はない。
- 下降し続けている。
- 上昇し続けている。
- 上昇と下降を繰り返している。
③ 上昇し続けている。
生涯未婚率(50歳時の未婚割合)の推移をみると、平成22年(2010年)には男性20.14%・女性10.61%であったものが、平成27年(2015年)には男性24.77%・女性14.89%、令和2年(2020年)には男性28.25%・女性17.81%と、男女ともに上昇し続けている。
*第2編1章 1.3〕配偶関係別人口 p42
▶午後10改題
令和5年(2023年)の人口動態統計における合計特殊出生率に最も近いのはどれか。
- 0.7
- 1.2
- 1.7
- 2.2
② 1.2
合計特殊出生率は、15~49歳の女性の年齢別出生率を合計したものをいい、令和5年(2023年)は1.20となっている。
*第2編2章 2.出生 p51~55
▶午後12
膵管と合流して大十二指腸乳頭(Vater〈ファーター〉乳頭)に開口するのはどれか。
- 肝管
- 総肝管
- 総胆管
- 胆嚢管
③ 総胆管
肝臓から十二指腸までの胆汁の通り道を胆道といい、肝臓の出口から総肝管を通り、胆嚢からつながる胆嚢管が合流して総胆管となり、膵管と合流して十二指腸乳頭部に開口する。
▶午後13
正期産となる出産時期はどれか。
- 妊娠35週0日から39週6日
- 妊娠36週0日から40週6日
- 妊娠37週0日から41週6日
- 妊娠38週0日から42週6日
③ 妊娠37週0日から41週6日
妊娠満22週0日~36週6日の出産を早期産、妊娠満37週0日~41週6日の出産を正期産、妊娠満42週0日以降の出産を過期産という。
*第2編2章 2.出生 p51~55
▶午後14
器質的変化で嚥下障害が出現する疾患はどれか。
- 食道癌
- 脳血管疾患
- 筋強直性ジストロフィー
- Guillain-Barré〈ギラン・バレー〉症候群
① 食道癌
嚥下障害の原因として、嚥下に関わる口腔や咽頭、食道などの器官に解剖学的な構造異常がある器質的変化と、構造異常はないが嚥下動作に異常が見られる機能的な原因がある。食道粘膜の細胞ががん化する食道癌では、その器質的変化に伴う食道狭窄等により嚥下障害が出現する。
×② 脳血管疾患
機能的原因に当たり、脳血管疾患に伴う片麻痺等から嚥下障害が出現する。
×③ 筋強直性ジストロフィー
機能的原因に当たり、筋強直・筋萎縮に伴う咀嚼筋や咽喉頭筋の障害により、嚥下障害が出現する。
×④ Guillain-Barré〈ギラン・バレー〉症候群
機能的原因に当たり、ウイルス感染や細菌感染により免疫システムが異常をきたし、末梢神経の障害から嚥下障害が出現する。
▶午後15
高血圧が原因で起こりやすいのはどれか。
- 脳出血
- 脳塞栓症
- 脳動静脈奇形
- 急性硬膜下血腫
① 脳出血
脳出血の最大の原因は高血圧で、脳の細い血管が破けることで出血する。
▶午後16
手術予定の患者が服用している場合、安全のために術前の休薬を検討するのはどれか。
- 鉄剤
- 抗血小板薬
- 冠血管拡張薬
- プロトンポンプ阻害薬
② 抗血小板薬
抗血小板薬は、出血を止める血小板の機能を抑制し、血栓の生成の防止などに用いられるが、手術前には出血の増加を防ぐために、休薬を検討する必要がある。
▶午後17
看護過程における客観的情報はどれか。
- 家族の意見
- 患者の表情
- 患者の痛みの訴え
- 患者の病気に対する思い
② 患者の表情
客観的情報は表情等の観察やバイタルサイン等の測定で得られる情報で、患者の話や訴えから得られる主観的情報とは区別される。
▶午後18
フィジカルアセスメントで問診の次に行うのはどれか。
- 視診
- 触診
- 打診
- 聴診
① 視診
フィジカルアセスメントの一般的な順番として、「問診」「視診」「触診」「打診」「聴診」と、侵襲度(物理的接触)の低い方法から行う。
▶午後19
男性の導尿でカテーテルを挿入するとき、体幹に対する頭部側からの挿入角度はどれか。
- 0~10度
- 40~50度
- 80~90度
- 120~130度
③ 80~90度
導尿カテーテルは尿道に挿入し、膀胱内の尿を排出させるチューブである。男性の導尿では、尿道が屈曲しているため、陰茎を腹膜に対し約90度引き上げて開始し、約18~20cmを挿入する。
▶午後20
床上で排便しやすい体位はどれか。
- 仰臥位
- 側臥位
- Sims〈シムス〉位
- Fowler〈ファウラー〉位
④ Fowler〈ファウラー〉位
差し込み便器を用いて床上で行う排泄の援助では、上半身を軽く挙上した半坐位(ファウラー位)であると、腹圧がかけやすく排泄しやすい。
▶午後22
成人の静脈血採血の穿刺部位で適切なのはどれか。
- 腋窩静脈
- 上腕静脈
- 腕頭静脈
- 肘正中皮静脈
④ 肘正中皮静脈
成人の採血においては前腕の静脈が多く用いられ、橈側皮静脈、肘正中皮静脈、尺側皮静脈などが選択される。
▶午後23
自動体外式除細動器〈AED〉を使用するときに、胸骨圧迫を中断するのはどれか。
- 電源を入れるとき
- 電極パッドを貼るとき
- 心電図の解析中
- 電気ショックの直後
③ 心電図の解析中
心電図の解析中に体に触れると正確な解析が行えないため、胸骨圧迫をやめて傷病者から離れる必要がある。
▶午後24
側臥位における褥瘡の好発部位はどれか。
- 後頭部
- 耳介部
- 仙骨部
- 肩甲骨部
② 耳介部
側臥位で圧力が集中する耳介部は褥瘡の好発部位である。その他は仰臥位での褥瘡の好発部位に当たる。
▶午後25
緑内障患者への投与が禁忌なのはどれか。
- コデイン
- アスピリン
- アトロピン
- ジゴキシン
- フェニトイン
③ アトロピン
アトロピンは副交感神経に作用する鎮痙薬で、眼科においては瞳孔を広げる散瞳薬としても用いられる。ただし眼圧を上昇させるため、眼圧の上昇が原因である緑内障患者の症状を悪化させることがあり、禁忌とされる。
資料 厚生労働省「第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験、第113回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
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